ニュース2021.05.12
アクタスの環境問題への取り組みについて同社顧問の西弘信氏とSCM本部本部長補佐の福村勉氏に聞いた。インタビューには今年アクタスに入社した木場大雅氏(24)も同席した。(アクタスの環境への取り組みとバリュースコア構想①参照)
――アクタスでは、どのように環境に取り組んでいるのでしょうか。
西 私たちの強みは、いい素材を使って、オリジナルデザインを提供し、欧州のいいデザインのものを買い付け、ターゲットを見据えた販売をしていることです。そして今、弊社に関係の深い上場企業でも環境問題に非常に熱心に取り組まれています。私たちも環境に対してどのように配慮してきたか、世の中に訴える時期に来ていると思っています。
私たちは業界に先駆けてシックハウス対策に取り組みました。海外生産の製品でF☆☆☆☆(フォースター)をいち早く達成したのがアクタスです。塗料や接着剤の成分を分析して、中国やベトナムのメーカーに使う塗料などを指示して、フォースターに適合するようにしました。
こうした環境対策の流れの中で、2006年から不要家具のリサイクルを始めました。家具を納品したときに不要な家具が出てきますが、家具小売業界は家電業界と違って、法的には不要家具を有償で引き取って廃棄することはできません(商慣習としての無償、同等品引き取りの場合のみ適法)。それでも物流会社さんにお願いして引き取ってもらう以上、費用発生することになるのですが、ドライバー不足で物流コストが高くなっていることや国際情勢もあって不要家具の引き取りはコスト課題をはじめ、今さまざまな問題が出てきています。
私たちは家具を単純に廃棄せずにリサイクルするべきだと思っています。それが二酸化炭素(CO2)削減にどれくらい貢献しているかも数値化しています。気候変動サミットで菅義偉首相が30年に向けて温室効果ガスを13年度比46%削減することを表明しましたが、各産業で目標に向けて取り組むことになります。そうすると、企業側は国内や海外でのCO2の排出を把握する努力が必要になります。
私たちは不要家具を引き取って全てリサイクルしているのですが、木材からテキスタイル、鉄、ガラス、石材などすべて分別して、専門業者に出してリサイクルしており、木材はパーティクルボードとして再生して住宅の建装材や家具に使われています。長年愛着を持った家具が捨てられるのではなくて、次の命を与えられる。ガラスや陶器類も路盤材として再生されます。サーキュラエコノミーにのっとって、ここまでリサイクルを実現している家具店はおそらく他にはないと思います。
――今、家具業界では安価な家具が市場を席巻している状況です。そのバランスを変えていくキーワードが環境だと思うのですが、いかがでしょうか。
西 私たちが納品に行きますと2割近くのお客さまから不要家具を引き取ってほしいと言われ、その件数が徐々に増えてきていますが、やはり安価な家具の引き取りが多いです。それを私たちは、よりよい家具への買い替えであると認識しており、より価値が高い物、長持ちする物を買われる方が多くなっているということだと思います。
アパレルのファストファッションでもそうですが、世界を見ている企業はどの業界でも環境対応を強化し、投資家もそれに注目しています。一流企業は全て環境対策に取り組んでいますよね。ですから、リーズナブルな家具との差別化のために環境に取り組むわけではないのです。リーズナブルな家具を作っている企業の環境への取り組みも、ものすごい早さで進んでいますから。環境に取り組まなければ、何をもってお客さまに納得していただけるのか、今はもうそんな時代になっていると思います。
――米国などでは環境に対する消費者の見方は非常に厳しいのですが、日本はまだそこまでではありませんね。
西 そうですね。ただ、家電リサイクル法が施行されて20年以上になりますが、業種によってリサイクルの意識の差があるのは事実ですね。現場で分別をやっている人と話をした際、家具の分解・分別はとても厄介でコストと時間がかかり、作り手側はそのことを考えていないという指摘を受けました。その家具は15年前に作ったものだったのですが、では今の家具はどうかというと、やはり変わっていません。不要家具を引き取るのは小売業者と物流業者です。そのことをメーカーさんは分かっていません。小売り大手も、ほとんど廃棄していますが、私たちはやはりリサイクルするべきだと思います。
アクタスの新入社員研修プログラムには、引き取った不要家具の分解する現場作業研修を組み込んでいます。家具を分解すると、限りある素材を生かすためにリサイクルすることが、いかに大変かということが分かります。
――スコア制が導入されれば画期的なことだと思います。
福村 スコア制については構想段階であり、協力メーカーさんに要請しているわけではないのですが、家具業界全体でこういった方向性を考えないと私どもだけでは難しいところがあります。お客さんの立場に立つと、自分で修理して使えるということがわかれば捨てないですよね。最終的に処分をする時も、素材別に分解して再利用、再資源化される、燃やされないことがわかれば、信頼度も高くなるはずです。若い人たちを中心に、こうした考え方の認知度が高くなってくることは間違いありません。そうすると近い将来、環境に配慮していない製品は購入対象から外れる可能性もあるわけです。
リサイクルの処理業者さんに聞くと「家電にはどこのメーカーでどういう素材が使われているか、情報が表示されているが、家具は情報がなくて困る。それが分かれば(分解やリサイクル)作業しやすい」と言われます。
西 バリュースコアについては、企業の価値として訴求していきたいと思います。特にメディア、お客さま、市場から注目されるような内容とアクションが必要であると思っています。商品の価値と、環境に対する価値とを、ご協力をいただけるメーカーの方々と連携して強化を図りながら見えるようにして、お客さまには商品の優れている点や優位性について説明できればと思っています。
例えばマットレスのポケットコイルのように簡単に分解できないような構造は、最低スコアになると思います。そういった製品の評価をやるということです。しかし、これは私たちだけでは、分からないことも多いので、一緒にやりたいという仲間を集めたいと思います。もちろん欧州などの海外製の物もスコアを付けますが、メーカーの理解度は日本より間違いなく高いと思います。最後まで面倒を見られるかどうかということも、ものづくりの理念であるという、そういう時代に来ているのです。
――木場さん、お話を聞いた感想はいかがでしょうか。
木場 実際に弊社の千葉にある大宮倉庫で家具の解体を経験したのですが、こんなに多くの不要家具が回収されているのかと本当に驚きました。一個一個、シートをはがして、木やプラスチックの廃材を分別していく仕事を、地域のシルバー人材センターから派遣された高齢者の方が手作業でやっていました。ポケットコイルも一つ一つカッターナイフでカバーを開いて、その中のバネを鉄として分別していくわけです。話を聞いて大変だなと思うことと、実際に見て自ら行ってみてその作業の大変さの重みというのは、やはり違うなと感じました。皆さんが自ら進んで環境に対してもっと取り組み、前進していくことができればと思います。
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