ニュース2021.05.12
業界に先駆けて家具のリサイクル事業に取り組んでいるアクタスは、心地よく長く使い続ける家具が地球環境保全にも貢献するという「エココチ計画」を推進している。ていの視点を含めた商品価値を想定し、評価してスコアを付けるという、画期的な構想も検討中だ。同社顧問の西弘信氏は「メーカーはリサイクルのことを考えて家具を作ってほしい。最後まで面倒を見られるかどうかということも、ものづくりの理念であるという時代に来ている」と、業界一体となった取り組みの必要性を訴える。
「私たちが環境に対してどのように配慮してきたか、世の中に訴える時期に来ている」と西氏は語り始めた(インタビューは「アクタスの環境への取り組みとバリュースコア構想②」をご覧ください)。
アクタスは2006年から業界に先駆けて、廃家具の再資源化を開始し、09年に木材リサイクル製材を家具に再利用する取り組みを「エコループ」として商標登録した。19年の創立50周年を機にさらにブラッシュアップしようとしている。
09年から推進している「エココチ計画」についてSCM本部長補佐の福村勉氏は「アクタスの経営理念である『真に豊かな生活』とは大量のモノを所有したり、消費するのではなく、気に入って購入いただいた家具を使い、愛着を持っているものをより長く愛用いただき、最後に処分する時までエコに変えるという意味合い。心地いいエコ(を目指す)、それを造語でエココチと呼んだのがスタート」と説明する。
エココチ計画の3つのアクションの1つが家具のF☆☆☆☆(フォースター)。海外生産の商品に対しても徹底した。2つ目がリサイクル、3つ目が家具を長く使ってもらうためのロングライフサポート。
家具のリサイクルは、引き取り品の梱包材の再資源化から始まり、16年に全てを単純廃棄せずにリサイクルに供するゼロエミッションを全物流拠点で達成した。
同社のウェブでは、リサイクルするアイテムごとに処理・回収料金を明示している。マーケティング本部副本部長の伊東裕子氏は「ソファ、テーブル、椅子、机、棚などさまざまな物が回収されるが、それを私どもの倉庫で全て分解・分別している」と説明する。木材については、パーティクルボードの材料メーカーに運び込んで、建材や家具用のボードとして再生、アクタスが扱う家具に再利用している。その木材の流れを「エコループ」と呼んでいる。同社が算出した20年までのリサイクル事業による累計の二酸化炭素(CO2)削減効果は東京ドーム27個分の森林面積に相当するという。
50周年を迎えた同社は、次の50年に向けて環境をテーマに原材料のトレーサビリティ、環境にやさしい商品開発、温室効果ガス削減対策、社会への訴求方法などについて4つの委員会を社内につくり、具体的な検討を進めている。
「メーカーさんも一部ではリペア、リユースに取り組んでいますが、家具の作り方は独自のもので自ら修理もされている。でも最終的に廃棄処分、リサイクルとなった際、どう素材別に分解・分別してリサイクルすればいいのか、といった情報が少ないのが現状」と福村氏は指摘する。
そこで同社が考えているのが「バリュースコア(仮称)化構想」である。「リペア、リユース、リサイクルの観点を含めた、地球環境に対する商品の貢献価値というものを評価基準にしてスコアを付け、販売事業や顧客への訴求、取引先としての優位性などに結び付けていく」と福村氏は説明する。つまり従来の商品の一般的価値だけでなく、例えば木材の合法性や環境に配慮した素材・材料の採用、修理しやすさ、分解のしやすさなども価値評価の対象にすることを考えているという。 西氏は「環境に関する訴求については、他の業界と比べて残念ながら家具業界は遅れている。特に家具産業で働くことを目指す次世代の人たちへのメッセージ性が大切だと思う」と強調した。
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