ニュース2019.10.13
環境保全団体のWWF(世界自然保護基金)は9月11日、「スポーツとSDGs―持続可能な日本のレガシー」と題するシンポジウムを東京都渋谷区の国連大学ウ・タント国際会議場で開催した。シンポジウムでは東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会、街づくり・持続可能性委員会委員長を務める小宮山宏氏(三菱総合研究所理事長)による基調講演や、WWFジャパン担当者らによる東京大会の施設や資機材などの調達について、持続可能な開発目標(SDGs)に基づいた環境に配慮した調達コードのあり方などに関する解説が行われた。
シンポジウムでは、小宮山氏の「東京大会の持続可能性の取組と日本社会に残すレガシー」と題する基調講演に続いて、WWFジャパン専門ディレクターで東京大会組織委員会、街づくり・持続可能性委員会委員の小西雅子氏が「東京大会の持続可能性の取り組みと、脱炭素に向けて」と題して、東京大会ではSDGsへの貢献を掲げて、大会で使うエネルギーの脱炭素化や、木材、紙、パーム油、水産物などの調達方針(調達コード)を、環境に配慮したものとして策定する試みが進められてきたことなどを解説した。
■木材調達の課題
二氏の講演の後、木材や紙、パーム油、水産物など個別の原材料調達の現状や課題についてWWFジャパン担当者による報告が行われた。
この中で、森林グループ木材マーケット担当の相馬真紀子氏は、世界の森林減少は年間760万㌶に及び、アマゾン、インドネシア、アフリカなど熱帯地域での森林減少が深刻とし、主な負の影響として、生物多様性損失・絶滅危惧種の生息地減少、地域住民や先住民との社会紛争、二酸化炭素吸収源の減少と排出による温暖化への影響をあげた。
これに対する持続可能な林産物の調達に向けた取り組みとして、1993年にWWFが中心となってFSC(森林管理協議会)を立上げ、2005年前後には日本でも木材や紙の調達方針の策定が広がったこと。10年以降は持続可能性の確認が進むとともに、SDGsを経営戦略に取り込むことで企業価値の持続的な向上と社会課題の解決を目指す「森林減少ゼロ」サプライチェーンを宣言する企業が多数登場していることなどを紹介した。
その上で相馬氏は①現行の木材調達基準では持続可能な調達ができない可能性がある②SDGsやESGに象徴される世界の流れは、森林減少や人権侵害につながる産品をサプライチェーンから排除する方向にある③ポスト2020を見据えて持続可能で透明性のある調達がますます求められる④違法伐採や環境・社会面で問題のある地域・企業に由来する木材を避けるために、信頼できる認証の活用、自主的な確認、より多くの企業が調達方針を公表することを期待する―と語った。
■企業の取り組み
シンポジウムの最後は、持続可能な調達に取り組む企業の担当者3人により「評価されるSDGsとは」をテーマにパネルディスカッションが行われた。
ミサワホーム生産統括部部長の飯田朋治氏は、木材の持続可能な調達について、同社の調達ガイドラインや、インドネシアでのFSC認証材の現地視察を社員が実際に行っている取り組みについて報告した。
また、パナソニック・ブランドコミュニケーション本部CSR・社会文化部部長の福田里香氏は、同社グループ内の社員食堂でのサステナブル・シーフードの提供について説明した。花王、購買部門原料部長の藤岡秀章氏は、紙やパーム油に関する持続可能な調達の取り組みについて語った。
会場からの質疑応答では「認証制度がいろいろあって分かりにくい」、「日本でMSC、FSC認証が普及していないのはなぜか」などの質問が出され、各担当者による回答・解説が行われた。
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