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神谷コーポレーション湘南の挑戦 慣習を打ち破った開発 フルハイトドアの真価を世界に!

「お施主さまの満足を第一にして世界に挑む」と語る神谷忠重社長
5頭分の最高級本革を使った「FIVEQUEENS」で本場イタリアの見本市に挑戦する

 「フルハイトドア」をブランド展開している神谷コーポレーション湘南は、牛本革5頭分を使用した「FIVE QUEENS(ファイブクイーンズ)」、日本の伝統的な格子戸をモチーフにした「Zen style(ゼンスタイル)」などを本場イタリアの見本市「MADE EXPO」に持ち込み、世界マーケットにアピールする。アラブ首長国連邦のドバイで開催された見本市の視察を終えたばかりという神谷忠重社長が、世界挑戦の目的について語った。

社内の〝超党派〟で研究
顧客満足度ファーストを徹底

 イタリアのミラノで開催される建築・デザイン・建材の国際見本市「MADE EXPO」は、3月13日から4日間開催される。神谷コーポレーション湘南にとって、欧州進出が世界マーケット挑戦への第一歩となる。
 欧州と日本ではドアの役割に関する考え方が異なる。「特にイタリアにはドアの深い文化がある」と神谷社長は語る。室内ドアを取り付ける壁の概念が日本に普及したのは戦後のことだった。それまでは、ふすまか障子で部屋を仕切る「木と紙の家」が習わしだった。同社がイタリアのドアを目標と定めてから十数年。神谷社長は、世界各地のドアメーカーが出展するイタリアの展示会へ毎年、足を運んだ。
 「やはり格好いいのはイタリアのドア。思い入れ、デザイン性、作り込みを含めて世界一だと思う。技術、塗装も素晴らしい」と認める。だが、それだけで終わらない。「KAMIYAのドアは、デザイン性では今やイタリアに追いつき、追い越したとさえ感じている。レパートリーもはるかに多い」と自信を込めて語る。
 ミラノは「フルハイトドア」のトップモデルを出展する。その筆頭が5頭分の牛本革を使った「FIVE QUEENS」。神谷社長は「イタリアではビニールレザーを使ったドアが多い。そこに本革で勝負を挑む」と意気込む。
 ほかにも日本の伝統工芸を絶妙なバランスでモダンにアレンジした格子戸デザインの「Zen style」、好きな壁紙を張ったり、ペイントをしたり、使う人の好みに合わせて自由に仕上げることができる「F/S(フルステルス)」、ペットが出入りできる開口部を設けた「Caro(カロ)」などを予定している。いずれも海外のライフスタイルに合わせた仕様で出品する。
 神谷社長はドバイで昨年11月末に開催された「THE BIG5 Dubai」を視察した。中東屈指の国際都市ドバイは「今や経済の中心。発展のスピードがすごい」。現地では財閥の邸宅やパームジュメイラ(沖合に造られた人工島群)にある時価9億円のマンションも視察した。使われていたドアはイタリア製の最高級品だった。「イタリアに出展するのは世界挑戦への入り口に過ぎない。イタリアの後、ドバイのBIG5に出展する」。なぜ世界に挑戦するのか。神谷社長の答えは明快だ。
 「真の顧客はお施主さまである時代。お施主さまのニーズに応えることを常に考えている」。大手住宅メーカーの下請けだったころは「お施主さま目線で考えることができなかった」時もあった。しかし、下請けをやめて、ブランド展開する道を選んだことで、真の顧客である「お施主さま」からフルハイトドアを指名されることが増えた。海外への進出を決意したのは「国内でフルハイトドアをご採用いただいたお施主さまが『世界で認められているフルハイトドアを選んでよかった』と満足していただくこと」が一番の理由だった。
 フルハイトドアの開発から始まり、牛本革、ワニ革の超高級ドアを市場に放つ大胆な試み、IoTを搭載した「FULL HEIGHT MILAOS(フルハイトミラオス)」など斬新なアイデアを盛り込んだ商品の開発、電話1本で自宅に呼べる出前ショールーム「夢はこ」やAR(拡張現実)の活用―。新しいことにチャレンジするパワーの源はどこにあるのか。
 「社内には商品開発部を置いていない。なまじ商品開発部を置くと、部の存在理由のために、つまらない商品を作る。そして責任を回避する」と神谷社長はきっぱり。「設計・開発・製造、ブランディング……、それぞれのセクションの壁を越えて、いわば社内の“超党派”で研究し、その頂点に営業がある。いろいろなタイプの人間が参加して取り組んでいるから新しいアイデアが生まれ、開発のスピードも他社より早い」と豪快な笑顔を見せた。季節ごとに布を張り替えることができるファブリックドア、ロングセラーとなったペットドアは、女性チームで開発した。
 常に固定観念にとらわれず、住宅産業の慣習を打ち破った商品を開発し続ける。まさに「ドア業界の革命児」ともいえるKAMIYAの世界挑戦の扉が今年、開こうとしている。

「壁がドアに」は和の発想
坂倉建築研究所建築家 永山 剛氏

 枠のないドアを造作することはできますが、フルハイトドアに出合った時、それを商品化していることに興味を持ちました。このアイデアを生かせば、施主さまへの提案の幅も広がると感じました。
 住宅の中で生活感を帯びる箇所の1つは、廊下などの狭小スペースです。枠を無くし、壁と一体化することで、ドアの気配を消し、意識していることに視線が向きやすいクリアな空間をつくることができます。
 設計者の立場から「ここを改良すればもっと良くなる」とお話したことがありました。そうすると後日に突然「できました。ショールームにお越しください」と既に展示品が出来上がっていました。指摘されたことを自社のフィルターに通して、圧倒的なスピードで対応するところに驚かされました。
 日本の文化には、障子やふすまのように壁にも扉にもなる発想がベースとしてあります。私見ですが、フルハイトドアはそれを現代的な解釈で表現されていると思っています。これからの住宅を考えると、壁が扉になるという発想の原点は、大きな可能性を持っています。それを海外のニーズに合わせてアップデートすれば、十分に戦えるのではないでしょうか。
 会社のビジョンと社長の決断力、社員の姿勢が三位一体となったチャレンジ精神、それが神谷コーポレーションさんの最大の武器で魅力だと思います。

フルハイトドアの軌跡

 神谷コーポレーション湘南の「フルハイトドア」は、同社の絶え間ないイノベーションによって生まれ、豊かな発想による製品開発と大胆な販売戦略によって成長を続けている。
 誕生は2005年。一般的なドアの高さが2㍍なのに対し、日本の住宅の天井は、高さ2・4㍍が一般的。フルハイトドアは、天井まで届く高さを実現するため、規格寸法を高さ2・4㍍、次に2・7㍍まで対応できるよう引き上げた。
 多くの国内建材メーカーが諦めていた「反り」への挑戦が「フルハイトドア」を完成させた。従来型の2㍍サイズのドアでも、以前からスチールパイプを内部に組み入れて補強していたが、これに加え、ドア内部の空気を循環させ、熱を逃がす技術を組み合わせて特許を取得。ドアの変形を大幅に抑えることに成功した。その開発と商品化の過程で、8件もの特許技術を取得している。
 17年6月、高級ブランドが立ち並ぶ銀座4丁目のビルの屋上にフルハイトドアの最高峰に位置する「IMPERIAL(インペリアル)」の看板が登場した。東京五輪・パラリンピックが開催される20年まで掲げられる。
 「インペリアル」は「皮革の宝石」として知られるニューギニアワニの「クロコ革」に手間をかけて加工が施されている。価格は900万円。「日本一のドアを作りたい」という神谷社長の思いから生まれ、欧州に比べて意識が低い日本のドアのブランド向上に一役買った。
 希少野生動物の保護を目的としたワシントン条約による許可を受けているが、入国手続きの複雑さから、ミラノ出展は残念ながら先送りとなった。昨年5月、東京ビッグサイトで開催された「住宅ビジネスフェア」で「インペリアル」がお披露目された時、訪れた設計士の一人は「こんなドア見たことがない」と驚いていた。
 昨年、話題をさらったのはIoTを駆使した「フルハイトミラオス」だった。全面がミラーに覆われた近未来型のデザインが施され、音声操作で鏡の一部がディスプレーに変化して、天気予報やスケジュール情報が表示されるようになっている。今年度にも一般販売が予定されている。部屋の間仕切りや開け閉めといったドアに情報端末機能を持たせ、ドアの歴史に新たなページを刻んだ。

日本の伝統的な格子をモチーフにした「Zen style(ゼンスタイル)」は、開き戸スタイルで出展する
永山 剛氏
横浜ショールームにはフルハイトドア最高峰の「インペリアル」やIoT技術を駆使した「フルハイトミラオス」が展示されている

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