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★【銀座英國屋 ・小林英毅社長 後継者へのメッセージ⑨】共に解決を―後継者育成の鍵は「現経営者の課題」にあり

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 連載第9回では、事業承継を見据えた後継者の就職先として、他社での武者修行を経ずに「いきなり自社」へ入社することをお勧めさせていただきました。推奨理由①「自分が成果を出してこそ認められる」を助長しやすいから。推奨理由②自社にとっては「早すぎる課題」に目が向きがちだから。推奨理由③スピードにイラつき、敬意を持ちにくくなるから。では、自社に入った後継者は、具体的に何から手をつければ、会社に貢献し、かつ自身の成長につなげることができるのでしょうか。多くの後継者が悩むこの問いに対する私の答えは、至ってシンプルです。それは「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決する」ことにほかなりません。

自社の最優先課題を一番把握しているのは、現経営者
 後継者が入社してまず陥りがちなのが「一日も早く成果を出し、信頼を得たい」という罠(わな)です。しかし、会社の歴史や経緯(いきさつ)を深く理解しないままの改革案は、長年会社を支えてきたベテラン社員たちの目には、自分たちの努力や過去への「単なる否定」と映りかねません。後継者が良かれと思った行動が、かえって信頼を損ねます。
 後継者が本当に果たすべき役割は、変革の旗手として先頭に立つことではなく、まず「社員が成果を出しやすい環境をつくること」で信頼を得ることです。
 そのための最高の出発点が「現経営者が今まさに頭を悩ませている課題」です。
 なぜなら、会社の最優先課題を最も的確に把握しているのは、長年、会社の舵取りをしてこられた現経営者だからです。その課題の多くは「現場で働く社員も困っている課題」であることが多いもの。ですから、現経営者の頭を悩ます問題の解決に、後継者が共に取り組むことは、後継者の信頼獲得においても有益な一歩となります。
ここで重要なのは、後継者の立ち位置です。後継者には、あくまで「現経営者のサポート」に徹することが重要。社員への説明も、現経営者がします。
 社員は長年、現経営者を信頼して働いています。その経営者からの説明であれば、社員も納得し、協力を得やすいはずです。この進め方であれば「後継者の暴走」とは見えにくく、むしろ社長を支え、会社・社員のために汗をかく誠実な姿として映りやすいものです。

最優先課題の解決に注力してこそ、深く学べる。
 後継者育成のために、MBAや中小企業診断士などの資格取得を奨励したりする経営者の方も多くいらっしゃいます。それ自体は素晴らしいことですが、そうした学びは、どうしても「浅く広くしか学べない」という側面があります。
それに対し、目の前にある一つの経営課題に集中する場合、深く学ぶことができます。
 その課題に関する書籍や動画、他社事例といった関連コンテンツに20個も触れれば、基本的な専門用語は自然と頭に入り、その分野の専門家ともしっかりと討議できるようになります。
 そして、このプロセスで最も重要なのが、「応用力」の養成です。経営の世界では、一般的に良い解決策が、自社にとって最善の解決策となるかは別問題。外部から仕入れた知識を、そのまま自社に当てはめてもうまくいきません。集中して深く学ぶからこそ、さまざまなパターンも分かり「自社にとって最善のアレンジ」もできるようになります。この「アレンジ力」こそ、経営者に不可欠な能力であり、経営課題に実際に取り組む中で磨かれるものです。
 私自身も、WEBマーケティング(集客)について、2020年から関連コンテンツを1000以上触れてきており、他社のWEBページを「売れるWEBページ」に刷新できる能力も身につけてきました。
 このため、後継者の教材として「自社の課題」をお勧めします。

WEBページ刷新による集客 or 販売強化・採用強化もおすすめ
 具体的な経営課題が思い当たらなければ「売れるWEBページへの刷新」をお勧めします。
 何より、かのダイエー創業者である中内功氏が遺(のこ)した「売り上げが全てを癒す」という言葉の通り、この取り組みは事業の根幹である売り上げ・利益に直結するからです。今の採用難の時代を乗り切るには、社員に報いるための給与原資の確保が必須。そのような意味でも、WEB経由の集客・販売を強化し、利益を出すことは、会社の存続と発展の大きな助けになります。
 また、WEBページに関しては、多くの現経営者が苦手意識を持ち、一方で「後継者の方が得意」な分野であることが多いからです。後継者が主体性を発揮しやすく、自信をつけるきっかけにもなります。
 売れるWEBサイトを作り込む過程で、自社の差別化ポイントを学ぶことになり、自社に対する理解も深くなります。
 優れたWEBページは、昨今の「採用難に向けても」非常に有効な武器となります。
 求職者は採用ページだけではなく、その会社の「競合との差別化ポイント」も見ているものです。
このような意味で、「売れるWEBページ」を作り込むことは、お勧めです。

次回は「売れるWEBページ」の作り方。
 次回連載第11回では、売れるWEBページの作り方をお伝えします。
 事業承継とは若干異なるように見えますが、私が事業承継コンサルとしてお手伝いさせていただく際にも、ほぼ「売れるWEBページ制作」のことに触れるため、それをご説明したいと思います。

こばやし・えいき 1981年東京生まれ。2004年慶應義塾大学経済学部卒、ワークスアプリケーションズ入社(大手企業向けERPパッケージソフトの開発・販売)、06年銀座英國屋入社(25歳)、09年銀座英國屋代表取締役社長就任(28歳)、24年社長15年目。一橋大学MBA・明治大学MBA。組織論、青山学院大学ファッション-ビジネス戦略論、100年経営企業倶楽部のゲスト講師を務める。後継者育成相談協会理事長。

小林英毅社長

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