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★「共同行動宣言」との連携を突破口に 織田 央 林野庁長官に聞く

織田央林野庁長官

 天羽隆氏に代わって6月28日付で林野庁長官に就任した織田央(おりた・ひろし)氏(59)は7月11日、家具新聞など林業・木材関連紙・誌が加盟する林政記者クラブの会見に応じ、森林行政への抱負を表明した。織田氏は、森林・林業・木材団体が国産材の安定供給体制の構築に向けて提言した共同行動宣言と連携していくことが、課題解決の「突破口になる」と話した。

 ――林政の課題について,どのようにお考えですか。
 ウッドショックによる急激な変化の中、木材輸入の状況が不安定になりました。為替の動きもありますが、これは一時的なものではなく、今までのように日本が、いつでも好きな時に好きな量を輸入することが、だんだん難しくなってきていることが背景にあるのではないかと思います。
 さらに、ロシアによるウクライナ侵攻によって、国際社会全体の平和を前提とした自由な貿易の根幹が揺らいでいることもあって、木材輸入の環境が読みづらくなっています。
 資材価格が高騰していますが、木材の場合は燃料と異なり、国内に資源があるため、国産材の需要が急激に高まっていると認識しています。川中、川下の需要に応えて、しっかりと山から丸太を出して国産材を供給していけるかどうか。ある意味で国産材にとってはチャンスなので、森林・林業基本計画に掲げた政策の実行にスピード感が求められていることが今の大きな課題だと思います。また、基本計画に掲げているように、再造林しながら安定供給することも大きな課題です。
 輸入材の今後の動向は不透明ですが、国産材のシェアを拡大するために、川上や川中への投資が必要です。一方で、安定した需要がないと投資できないので、国交省と連携しながらサプライチェーンをしっかりとつくることが重要だと思います。
 この点で、森林・林業・木材団体が国産材の安定供給体制の構築に向けた共同行動宣言を出されたことは、時宜を得た画期的なことだと思います。再造林まで視野に入れ、持続可能な形で経営されているところの木材を使う仕組みを考えましょうと提言されており、コストの適切な転嫁についても書かれています。林野庁が今後進めたい方向と非常にマッチしているので、この宣言と連携することが一つの突破口になる思います。
川上から川下まで
同じ船に乗っている

 ――どういう観点で木材を選ぶのかということがサプライチェーンの中で重要になっています。
 世界的な流れからすると、そういう方向ですね。地球温暖化防止や生物に対する保全という方向は、さらに強まってきます。おそらく、持続可能な経営や合法木材ではないと商売にならないという時代が来るのではないでしょうか。その流れは、弱まることなく強まっています。そこを見据えてサプライチェーンを組んでいかなければいけないと思います。
 ――家具業界の中にも、どこから木材を買うのかということが、これからもっと重要になるという意見も出ています。川下側への期待はいかがですか。
 共同行動宣言には、川上と川下の主要な団体が参加されていますが、これは川下の住宅メーカーやビルダーさんが、持続可能な木材ではないと取り扱わなくなっていくのではないかということで、先んじて仕組みを検討していきましょうということになったのだと思います。
 川上、川中、川下それぞれ安く買いたい方と高く売りたい方と、利益相反しているところもあるでしょうが、立木の値段をなんとか上げないと、賃金を上げられず、伐った後に植えることができなくなります。「情けは人のためならず」という言葉があるように、情緒的な物言いで商売の価格が決まるわけではないのでしょうが、伐って植えないと、数十年後には木材資源がなくなってしまうので、同じ船に乗っていることを意識してもらいたいと思います。
 おりた・ひろし 1988年東大農卒、農水省へ。2021年林野庁次長。長崎県出身、59歳。

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