ニュース

レクトラ ファニチャー・オンデマンド 裁断ソリューション初披露 アジアにインダストリー4.0の波 カリモク家具が採用 柄合わせ精度に驚きの声

CISMAで披露された「ファニチャー・オンデマンド」。柄合わせの精度の高さに驚きの声が上がっていた
ファニチャー・オンデマンド

 モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)を用いることによって製造業の革新を促す「インダストリー4・0」の波がアジアにも押し寄せている。ファブリック裁断ソリューションや3Dソフトウェアを全世界に提供しているレクトラはこのほど、業界初の裁断トータルソリューション「ファニチャー・オンデマンド by レクトラ」を中国・上海の展示会で初めて披露した。また、パイロットカスタマーとして同システムを試用していたカリモク家具が会期中の9月26日、導入に関する契約を同社と現地で結んだ。同システムは既に欧州の一流ブランドで使われているが、アジアでの導入はカリモク家具が初となる。


伊で約8割が使用
 1973年にフランスで設立。ファッション・アパレル業界から始まり、現在は自動車、家具まで布や革などソフトマテリアルを扱うためのCAD/CAM(コンピューター支援による設計・加工)システムおよび関連ソフトウエアを開発し、製造・販売している。海外や日本の大手自動車、アパレルメーカーに普及している。全世界の社員数は1700人で売り上げは約300億円、そのうちの10%を家具が占める。イタリアの家具メーカーの約8割がレクトラのシステムを使っている。


 「ファニチャー・オンデマンド」は昨年7月、欧州で発表された。アジアでは、中国・上海の中国新国際エキスポセンターで9月25日から28日まで4日間開催された世界最大級の縫製・裁断機器の展示会、中国国際縫製機器展示会(CISMA)で初めて披露された。カリモク家具との契約は、会期中に開かれたプレスカンファレンスの場で、レクトラ最高経営責任者(CEO)のダニエル・アラリ氏とカリモク家具専務取締役の林博行氏が契約書のサインを交わす形で行われた。
 インダストリー4・0による生産改革をサポートする「ファニチャー・オンデマンド」は、受注から裁断の工程を完全にデジタル化、自動化してメード・トゥ・オーダーに対応、工程の最適化によるリードタイムとコスト削減などが実現できる。
 使用する生地裁断機は「VIRGA(ヴィルガ)」。レクトラのデジタル裁断プラットフォームを組み合わせて使用する。ITシステムと裁断室間でデジタルのやり取りを行うことで、裁断ライン全体のスループット、俊敏性、コスト効率を最適化できる。裁断する生地が無地か柄付きかにかかわらず、ヴィルガを利用することで、生地ロール供給、スキャン、裁断、オフロードを同時に行う完全な裁断ラインを実現する。
 レクトラはCISMA会場でヴィルガを使ってデモンストレーションしながら、クラウドシステムによって世界各地の拠点とつないで裁断できるソリューションとして紹介した。会場ではその柄合わせの精度の高さに驚きの声が上がった。
 同社のプロダクト・マーケティング部バイスプレジデント、フレデリック・ガイラード氏は「電子商取引(EC)が普及する中で、変化の速度を速めて新しいトレンドに対応していく必要がある。カスタマイズのニーズを満たすために生産プロセスが複雑になり、経験豊かな社員も減っていく中で、レクトラはハードとソフト両面で個性化のニーズにこたえ、デジタル化をサポートしていく」と語った。


3D設計ソフト「デザインコンセプト」AFFに出展
 レクトラの日本法人、レクトラ・ジャパンは、アジア・ファニシング・フェア(AFF)に3D設計ソフトウェア「DesignConcept Furniture(デザインコンセプト・ファニチャー)」を出展する。
 デザイン・設計において3Dを使用するメリットは、試作品作製のコストを抑えられることと、海外工場とのやりとりが円滑に進むこと。デザイナーにとっては、細部のつくり込みまでイメージを伝えることができる。
 デザインコンセプトは、従来の3Dソフトが苦手といわれてきた、ソファなどの皮や布などを使ったところまで設計できる。現物試作品を作る前に、全体的なスタイル、布や革の張り方やテンション、縫い目まで検証できる上、出来上がった3Dデータから裁断パターンへ展開できる。さらに、初期段階で正確なコスト見積もりができることが、このソフトの大きな特徴だ。
 プロトタイプ作製とコスト計算を並行して行うことにより、使用する全ての材料を迅速かつ正確に予測できる。それがデザイン変革の可能性まで及ぶことについて、レクトラ・ジャパンの田中昭彦社長は「デザイナーから奇抜なデザインを提案されたときに『本当に作れるのか』『どれくらいコストがかかるのか』をデザインコンセプトでシミュレーションすることができます。これまで不可能と思っていたものが、外部のデザイナーや経営者も参加してネット上でディスカッションしながら実現性を検証することができるようになるのです」と話した。

ニュースの最新記事