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秋山木工 代表取締役 秋山 利輝氏 「働き方改革」では救えない… みんなで業界を元気に 不登校生の学校開設へ

秋山社長(中央)と秋山学校に入校した山田さん(左)、米林さん(右)

 オーダメードの家具づくりと職人の育成術で知られる秋山木工。5年連続で増収増益の業績を上げ、今年度は売り上げ20億円の大台に乗る勢いだ。好業績を維持する秘訣について聞こうと同社を訪問すると「みんなで業界を元気にしていかないといけない」と秋山利輝社長(76)。「働き方改革」から教育まで、業界を取り巻く社会情勢に話が及んだ。

 ―好調を持続させる秘訣は。
 自分だけが儲けてお金持ちになるのではなく、まず相手方を良くしようと思い、みんなをお金持ちにしようと考えることが大切です。そして、神さまが応援したくなるようなことを実行していけばよいのです。
 仕事が来ないからと言って、ぼやいていたらだめ。仕事は明るい人に集まります。仕事が集まっている絶好調な企業に習って、その理由を追求して考えることです。

 ―少子高齢化をはじめ、業界にとっても厳しい状況です。
 家具業界だけではなく、米中貿易摩擦をはじめとした、これからの世界の状況を見誤まらないようにしないといけません。価値観が変わり、これまで常識だったことが、通じなくなるようなことも起こるかもしれません。
 政府が進めている「働き方改革」にしても、これでは、誰もお金持ちにはならず、貧しい人を多くしていくような改革だと思います。

 ―長時間労働をなくしていこうとしていますね。
 労働時間が削られた分、時給が上がるわけではなく、財布のひもが固くなることになります。働きたいのに働けないという人もいるわけです。確かに過重労働で亡くなるケースもあり、それに対する対策は必要ですが、人間それほど弱くはありません。私は20年間ほど休みを取っていません。いま76歳ですが元気ですよ(笑)。一方で女性も働きなさいということになれば、人口の減少に歯止めをかけることはできなくなるでしょう。

 ―外国人労働者を雇用しようという動きも進んでいますね。
 それよりも30〜40歳代でいまだに非正規雇用者や、家にこもって働いていない方々が多いという現実をなんとかして、その人たちを救っていく必要があるのではないかと思います。

 ―既定の路線から外れてしまった人たちをまず救っていかなければいけないということでしょうか。
 不登校の生徒たちは今、50万人いるといわれています。学費を払えなかったり、両親が離婚したり、理由はいろいろとありますが、その中には頭のいい子もたくさんいるのです。私は学校の通信簿はオール1でしたが、手先が器用だったので、家具職人になることを志しました。歌がうまい、走るのが速い、料理が上手、大工が得意、釣りが得意といった、誰にでも他の人に負けない才能が一つはあるはずです。
 不登校の子どもたちに学ぶ機会を与え、高校の卒業資格を取れるようにして、就職できるようになんとかできないかと思い、有志で協力して今年の10月に学校を作ろうと思っています。もちろん家具も教えますが、それ以外の分野でも、技能オリンピックの金メダルを取れるように子どもたちの才能を育てたいと思います。

 ―秋山社長の職人育成術は中国でも人気を博しているそうですね。
 私が書いた「一流を育てる」は、中国で100万部を超え、中国の要人にも読んでいただきました。近々、3冊目の本が出版される予定です。

秋山学校新入生 産地活性化の決意も 感謝を学んだ

 秋山氏が校長を務める秋山学校に今年も2人の若者が入校した。
 長野県佐久市出身の山田渓太さん(19)は、高校で木工を学んだ。秋山氏の「丁稚のすすめ」を読んで秋山木工のことを知り、一流の職人を目指して入校したという。
 「これまで家族にたくさん迷惑をかけました」という山田さんは「一流になった姿を見せて喜ばせたい。人を感動させる家具を作りたい」と話した。
 北海道旭川市出身の米林雄斗さん(18)は、高校の建築家の授業や「旭川デザインウィーク」で木工に触れる機会があり、興味を持ったという。「旭川の家具業界を活性化させ、地元に家具づくりを学べる場を作くりたい」と抱負を話した。
 二人とも入校して秋山氏から学んだのは「感謝することの大切さ」。親や周りの人にこれから「恩返しをしていく」決意を述べた。

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