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★「インスタ映え」から「五感を満たす心地よい暮らし」へ ルームクリップがSNS調査

同じユーザーによる2015年㊧と2021年㊨のキッチンの投稿。インテリアスタイルが大きく変化していることがわかる

 家具や家電、雑貨などインテリア写真を投稿・閲覧できるソーシャルプラットフォーム「RoomClip(ルームクリップ)」を運営するルームクリップ(東京都渋谷区)は8月19日、RoomClip住文化研究所の第4回調査レポートを発表した。新型コロナウイルスの世界的な流行から1年以上が経つ今、暮らしがどう変化しているのかをRoomClipに投稿された写真や行動データをもとに調査したもので、レポートは「五感を満たす、『心地よい暮らし』へ―ポスト『映え』世界の価値とは」というタイトルでまとめられた。同レポートの概要は次の通り。

 ■「オシャレ」の失速

 SNSの中でも特にインスタグラムで投稿の価値を決定づけた「映え」は2017年までが黄金期と見られ、RoomClipでは「映え」トレンドは「〇〇インテリア」や「〇〇スタイル」といった特徴的なインテリアスタイルの流行という形で発展した。
 カフェブーム第1世代の層が中心となり、店を再現した「カフェ風インテリア」、無骨で粗野な「男前インテリア」、海外ビーチの開放感を感じさせる「西海岸インテリア」など、数多くのインテリアスタイルが人気を集めた。
 ユーザー投稿に付与された「〇〇インテリア」または「〇〇スタイル」のキーワードを含むタグの利用率を年次で比較したところ、12年から5年間で31・4倍に増加、「オシャレ」タグも14年から5年で12・5倍増加と、同時期に急成長していることがわかった。
 しかし2010年代終盤になると、見た目に関連する話題の勢いは鈍化。「〇〇インテリア」「〇〇スタイル」は17年を境に横ばいに、「オシャレ」は19年をピークに2年で40・7%減少した。
 次の2020年代は「映え」や「スタイル」といった見た目重視の世界から変化した。では、どういうものへシフトしているのか。RoomClipでは「心地よさの追求」がキーテーマになっていると見る。その背景には「感覚」に関する2010年代後半からの大きな動きがあるという。

 ■快適性の向上を求めて

 ポスト映え時代の価値である「心地よさ」をつくる上で欠かせないのが「空気」。18年から3年間、空調家電を話題にする投稿が伸びており、室内温度の調整性能に関する興味も深まっている。これを細かく見ていくと、16年から5年間で「サーキュレーター」のタグ利用率は7・9倍、「空気清浄機」と「加湿器」はそれぞれ3・6倍と3倍、「エアコン」は2・7倍と、いずれも上昇傾向にある。さらに検索率に目を向けてみると「断熱」というワードが16年に比べて5・5倍伸びていることがわかった。
 ここ1年に関してはコロナによる在宅時間の増加も後押しし、室内空間の快適性を強く求める意識は、飛躍的に高まっているといえる。

 ■匂いと暮らし

 「空気」と深い関係にある「匂い」も興味深いデータ推移を見せている。「消臭」または「脱臭」というキーワードを含むタグの利用率が16年から19年までの3年で2・1倍に伸長、19年以降は横ばいとなっている。一方「ルームフレグランス」のタグ利用率を見てみると16年から21年の5年間で2・9倍、鈍化は見られず、今も伸び続けていることがわかる。
 不快な「臭い」への対策はすでに定着し、部屋の心地良さをさらにアップデートするため「香り」の試行錯誤を始めている生活者の動きが見て取れる。

 ■音と暮らし

 「音」に関しては、住まいの中でどのような変化が起きているか。RoomClipに集まる投稿で興味深い動きを見せているのが「防音」。特に検索率の動きは顕著で18年比で2・4倍に伸長、今も上昇傾向にある。
 また、投稿に関する行動を見てみると「防音」というタグに併用して付与されるもののうち「ラグ」が80%を占めていることがわかった。宅トレやゲーム、子どもやペットの活動的な動きなど、生活音に対する身近な防音対策としてラグが使用されていることが分かった。

 ■心地良さへの試行錯誤

 今回の「空気」「匂い」「音」に関する調査結果は、住まいと暮らし領域において、生活者のこだわりが視覚以外の対象にシフトしていることを示している。目に見えないあらゆる感覚へのこだわりと、それらの体験を向上させることが「心地良さ」の追求であり「心地よい暮らし」という望ましいライフスタイルへと繋がる。
 「心地よい暮らし」の実現は、生活の中の「マイナスをゼロ」にする動きから始まる。今回取り上げた3テーマの動向は「暑い・寒い」「臭い」「うるさい」など、暮らしの中で五感にかかるストレスを解消し、ニュートラルな状態を確保しようと試行錯誤する様子だと言える。
 ゼロの状態が整うと、今度は「プラス」への意識が生まれてくる。「匂い」に関する調査で見えた「臭い対策の定着と香りへの注目」は、まさに、そんな「ゼロからプラス」に向かう動きの現れかもしれない。
 ポスト「映え」時代の今、人々がSNSに求めているのは、あらゆる感覚を満たし、自分自身が心から心地良いと思える暮らしを手に入れるためのアイデアやノウハウであると考えられる。
 ◇レポートの詳細は https://lab.roomclip.jp/contents/senses/

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