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★業界全体の目標設定を SDGsにどう取り組むか 日本オフィス家具協会専務理事 貫名 英一 氏に聞く㊤

日本オフィス家具協会専務理事 貫名 英一 氏

 家具業界のSDGsの取り組みが急ピッチで進んでいる。オフィス家具業界をとりまとめる日本オフィス家具協会(黒田章裕会長)は、2020年にSDGs委員会を立ち上げた。専務理事の貫名英一氏にJOIFAのSDGsの取り組みについて聞いた。さらに、ポストコロナの働き方はどう変わるのか、来年4月26日から28日までの3日間、東京ビッグサイトで初めて開催されるオルガテック東京の進捗についてインタビューした。その内容を次号9月15日号の2回に分けてお届けする。

 ―SDGs委員会の設立経緯と活動内容を教えてください。

 日本オフィス家具協会(JOIFA)の中期計画を立てた2019年、われわれの業界を取り巻く環境が30年にどうなっているかを予測して、そこからバックキャスティングした時、この3年間に何をやらなければならないか優先順位をつけてやりましょうと、さまざまな議題について議論しました。
 その中の一つのテーマとして、SDGsに取り組もうということになり、20年4月に委員会を立ち上げました。現在JOIFAには8つの委員会がありますが、その中の一つとして、大企業から中小企業まで参加して活動しています。
 まずは会員のSDGsの認知度を確認するために20年9月、109社にアンケートをとったところ、回答があった63社のうちSDGsに取り組んでいたのは4割でした。残りの6割は取り組んでいない、もしくは知らないという回答で、従業員が100人以上の会社は、取り組んでいるところが多かったのですが、100人未満だと、積極的に取り組んでいる企業が少ないという結果となりました。取り組んでいない会社の中で「必要性は理解するが、何からやったらいいか分からない」という会社が7割近くもありました。
 SDGsは知らないけれど、実際にはSDGsに関連していることに取り組んでいるケースについても調べてみました。例えば、環境物品などを優先的に購入するグリーン購入法には皆さん取り組まれているのですが、それとSDGsが関係していることを知らずにやってました。特に製品に関わる環境対応は皆さん結構進んでいます。SDGsの目標12「つくる責任・つかう責任」に関してもメーカーの皆さんは、知らずに取り組んでいるのです。つまり、大なり小なり、何かやっているのですが、それがSDGsと関係していると認識しているところが少ないわけです。これが1年前ですが、今はコロナの影響もあって認知度が上がってきていると思います。

絶対に実現する意志を込めた目標

 ―やはり世界がつながっているということに気付いたということでしょうか。

 皆さん命の危機に直面して、持続可能性について認識しはじめているのだと思います。では、どこからSDGsに取り組んでいけばいいのかということです。
 アンケートでSDGsの認知度が分かったので、まず経営者の認知度を上げていこうと12月に「SDGsと企業経営」をテーマにしたセミナーを開催し、YouTubeでも会員向けに発信して、今でも視聴できるようになっています。これを見た後に、社内にSDGs検討委員会を立ち上げた会社もありました。
 こうしてSDGs委員会で議論を進める中で、2つの課題に集約されました。それはJOIFAが業界として取り組むSDGsの目標、それぞれの企業が取り組むSDGsの目標、この2つの目標を作ろうということです。これまで各社それぞれ、SDGsに関連したことに取り組んできましたが、では業界としてどのような目標を作るか。全会員企業がまとまって、業界としてできる目標があるはずだという話になりました。
 SDGsに非常に熱心に取り組んでいる住友化学さんは、アフリカでマラリアを撲滅することを目標として掲げ、蚊帳を寄付することに継続的に取り組んでいます。しかし、1社だけでは撲滅できません。そこで同社は、世界中の大手化学メーカーを集めてマラリア撲滅の活動を始めました。会社によって得意なエリアがあり、それを生かして目標の実現に向かっていくわけです。
 今できることを各社一生懸命やっていますというのが、今の業界のSDGsの現状です。そうではなくて、できるかどうか分からないが、絶対に実現するという意志を持って掲げる目標があるのではないか。今のままでは到達しないかもしれないが、その目標のために何が必要かを考えたら実現できる可能性があるのではないか。つまり30年がどうなるかを見通した上で、3年間で何をやるかバックキャスティングで決めようということです。だから、業界として目標を高く掲げないといけないわけです。日本のオフィス家具産業に関わっている企業の9割以上がJOIFAに入っているわけですから、大きな目標を作ろうということになりました。

 ―SDGsの理解と最新動向の把握から始まり、さらなる課題解決と新たな機会創出までのロードマップを描いていますね。

 SDGs委員会が発足して2年目の今年は、SDGsに取り組まないことによる「リスク」と、取り組むことによって生まれる「機会」を各社が洗い出しています。これをもとに目標を決める作業を行っているところです。働き方改革、サステナビリティー、健康、イノベーション、気候変動、人材不足などさまざまな切り口から各社、リスクと機会の洗い出しを行っています。では何が業界にとって優先度が高いかというと、やはり「働き方改革」の話は非常に高いですね。
 一方で、それぞれの会員企業がSDGsに取り組んでいただくための説明会や事例紹介などの勉強会も開いています。少なくとも7割はSDGsに取り組んでいるというところまで持っていければと思っています。
 ―かなり包括的な議論になりますね。

 ほかの委員会で議論していても結局、SDGs委員会でやっていることにたどり着くのです。中期計画の段階では30年からバックキャスティングという話だったのですが、在宅勤務がピーク時で7割に達するなど、10年後に起こると思われていたことが、コロナ禍でそれがもう目の前まで来てしまいました。
 つまりサステナビリティーということを考えたときに、われわれの身近なところで何が一番変わるかというと「働き方」なのです。従来の働き方の変化の主人公は企業でした。企業がどう業績を上げるか、どう成長するかという視点で、生産性や効率性について議論していました。ところがコロナ禍によって、ワーカーが主人公になりました。在宅勤務の結果、距離を置いて会社を眺められるようになると「ちょっと待てよ」と思うことが多くなったわけです。これからは、ワーカーのウェルビーイング(幸福)も考えながら、今後どうなるか議論しないと道を誤るということが明確になりました。
(次号に続く)

ぬきな・えいいち 大阪大学大学院修士課程機械工学専攻。1985年コクヨ入社。オフィス家具事業部門で三重工場建設プロジェクトに関わる。コクヨマレーシア社長、生産本部長、コクヨファニチャー社長、技術担当役員を歴任。2020年コクヨを定年退職。趣味は鉄道模型。「月刊とれいん」に「E.NUKINAのB級コレクター道」連載中。

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