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日刊木材新聞新社屋 木の街のランドマークに 都市木造建築に挑戦

神代ニレを使った奥行き6㍍の会議テーブル。北海道の十勝川温泉郷近くで発見された神代ニレは、昭和木材によると推定200年という
空調設備を隠すためのタモのフリー板は、NCルーターで木漏れ日模様に加工されている

 かつて材木商が名を成した深川地域に位置する江東区冬木。深川第二中学校の隣に日刊木材新聞社の社屋がある。同社は創刊75周年を機に昨年9月末、木造の新社屋を竣工した。公共建築物の木材利用促進法が公布されて11年となる今年は、民間建築物木造化に関する法律の整備も進む。日本の木材業界をリードするメディアとして、木造・木質化に踏み切った思いを訪ねた。

デジタル技術を駆使

 日刊木材新聞は戦後間もない1945年の10月に「木材タイムス」として創刊し、紙齢は1万9千号を超える。国内外の木材動向から住生活全般の資材、住宅を始めとした建築物全般にわたる分野までカバーしている。
 新社屋は、建築面積135平方㍍、、延べ床面積376平方㍍の木造3階建て。西日が差す建物正面を、ガラスファサード越しに約1300ピースの集成材による三角升木組み格子が飾り、夜になると建物内部から照らされた意匠が浮き上がる。「木材の街」として栄えた地域のランドマークを意識した建物を目指したという。
 「江戸時代から木材問屋でにぎわった歴史を持つ木場なら木の香りがする建物を」。建て替え話が持ち上がった6年前を岡田直次社長は振り返った。少子高齢化が進み新築住宅建設の先細りが避けられない中で、木材需要の底辺拡大の一つとして「住宅をはじめとした建築構造物に木材をどう使っていくかが課題となっている。社屋を建て替えるなら木造で。それだけは外すことができなかった」と話す。
 エントランス内には、木材・林業に関わる書物を並べた木育ライブラリーも設けている。「隣の深川第二中学校の生徒たちが木に関心を持ってライブラリーを訪ねてほしい」という。書棚に使われたのは、昭和木材が供給した道産タモ材。編集室の共通資料棚、新聞保管棚にも使われている。木構造躯体には、福島産のカラマツ、編集室がある2階天井部(3階床)には無節の愛媛県産ヒノキによるCLTを採用している。
 木材の総使用量は約92立方㍍。社屋は準防火地域にある。2019年の改正建築基準法の施行で、延焼防止性能の高い建築物の技術基準が新たに整備され、同地域の準耐火建築物の意匠としての表現の可能性が広がった。その意匠のこだわりがデジタル加工技術を駆使した木組み格子に象徴されている。 岡田社長は建築認可の苦労も語った。「こういう建築物が一般化しているかというと、必ずしもそうではない。こんな場所でも木造の建物が建てられることをわかっていただき、今だったらできるという一つのきっかけになればと思う」

夜になると照明で浮き上がる木組み格子の原点は麻の葉文様
吊り構造になっている3階会議室から、木組み格子に面して吹き抜けになっている2階の編集室を見下ろす
日刊木材新聞社の岡田直次社長

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