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マレーシア国際家具見本市特集 その5 東南アジア 経済動向と家具産業 成長加速 ASEAN家具 米中貿易摩擦で対米輸出が伸張

 2019年は東南アジア諸国連合(ASEAN)の家具産業にとって転機の年となった。18年に顕在化した米中間の貿易戦争により、さまざまな企業が生産先や投資先を中国からASEANに移転させる動きが加速し、家具企業の多くもASEANへと軸足を移した。
 その結果、ベトナムやマレーシアでは家具の輸出が大きく伸び、外国からの投資も増加した。米中貿易戦争は長期化が予想され、どちらが勝者となるかはまだ分からないが、現時点で家具に関してはASEANが「漁夫の利」を得たといえそうだ。今後、世界最大の家具生産・輸出国である中国からどれだけシェアを奪うことができるか注目される。
 米中貿易戦争では、米国が18年9月に対中制裁の第3弾を発動し、中国から輸入される家具や家電などに10%の追加関税を課した。これを受けて、中国に拠点を置く製造企業の間では主にベトナムに工場を移転させる動きが進んだ。
 スイスに本拠を置く検査・認証サービス世界最大手SGSが19年7月に出したリポートによると、ベトナムは米中貿易戦争の最大の受益者であり、国内総生産(GDP)の約7・9%に当たる新たなビジネスを獲得した。特に家具産業は米国市場への輸出が拡大したことにより大きく成長した。
 ベトナムは18年時点で家具生産で世界5位(アジアでは全体1位の中国に次いで2位)。このまま順調に成長が続けば、今後8年以内に世界2位の家具生産国になると予測している。
 ただし、米国が今後、ベトナムを経由した迂回(うかい)輸出にも制裁を科すことになれば、現状が一変するリスクがある。また、ベトナムでは地価と人件費が上昇中で、安価に生産拠点を置ける利点が損なわれつつあることにも留意する必要がある。

◇外国投資の増加で技術向上も
 現在、ベトナムには約1500の家具輸出業者がある。そのうち約450社がFDI(外国直接投資)企業で、家具輸出の45%以上を担う。
 ベトナムはもともと屋外家具に強みを持つが、近年は外国からの投資で高度な設備を導入し屋内家具製造に注力するところが増えている。
 米中貿易戦争でベトナムの次に恩恵を受けているとみられるのがマレーシアだ。マレーシアは米中貿易戦争が顕在化する前の17年時点で家具輸出額世界9位、アジアでは3位、ASEANではベトナムに次いで2位だった。
 マレーシア国営メディアが今年7月に報じたところによると、同国の米国への家具輸出額は19年1~5月に前年同期比20・8%増の15億5000万リンギ(約3億7000万㌦、401億円)、全体家具輸出額は9・6%増の41億4000万リンギ(同9億9000万㌦、1072億円)となった。米国向け家具輸出額は今後3年間、年20%の伸びを期待できるとしている。
 マレーシアの地元メディアは、同国の大手金融系調査機関Amリサーチが、米中貿易戦争でマレーシア家具の米国での販売が拡大し、19年の輸出額が前年比6・1%増の113億リンギ(約27億㌦、2900億円)になるとの見立てを報じた。
 Amリサーチは、中国からマレーシアへの投資が増えていると指摘。その上で、マレーシアの製造企業に対して(迂回輸出とみなされない合弁企業を設立するなどして)外国資本を積極的に取り入れながらも他国との競争に負けないよう、自動化の促進や製品の品質向上を促している。
 マレーシアは家具産業を国策として推進し、20年までに家具輸出額120億リンギ(約28億㌦、3100億円)を達成する目標を掲げている。
 生産拡大に向けては、国内最大の家具産地とされる南部ジョホール州ムアーで大型工業団地「ムアー家具団地」の建設が進められている。
 建設を進めているジョホール州政府系企業Jコープのカマルザマン・アブ・カシム社長兼最高経営責任者(CEO)が地元メディアに明らかにしたところによると、ムアー家具団地は工業用地と商業用地を兼ね備える国内初の家具産業の統合ハブとして開発中で、20年6月に完成予定。19年10月時点で計124社が400ヘクタールの敷地の70%に当たる土地の取得契約を完了させている。

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