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九大移転で危機
九大総合博物館「歴史的家具の救済を」
クラウドファンディングで寄付募集

1907(明治40)年に購入された両袖机、戦前の椅子などが回収された。英国の百科事典と一緒に購入されたと思われる書見台など珍しい家具もある

 九州大学総合博物館はこのほど、福岡市の九州大学キャンパス移転や建物の建て替えに伴い廃棄することになった歴史的木製家具などを救済するための寄付の募集を開始した。インターネットのクラウドファンディング「Readyfor」を通じて目標額を200万円に設定し、7月31日まで寄付を募っている。
 今回のクラウドファンディングは、今年夏に移転予定の箱崎キャンパス農学部と文系地区で使われていた木製家具の回収を目的としており、費用の大部分は、木製家具の搬出費用に充てられる。「もし費用が集まらない場合、解体予定の校舎とともに、歴史的な価値のある木製家具が廃棄・破壊されてしまう。皆さまのご支援をお願いします」と同博物館准教授の三島美佐子氏は協力を呼び掛けている。
 九大は2005年から、福岡市の六本松、箱崎キャンパスを同市西区の伊都キャンパスへ移転しており、今年9月に完了する予定。ところが、移転の過程で、古くは旧帝国大学時代から使用されてきた歴史的価値のある家具を含む什器が買い替えられ、廃棄されるケースが出てきた。
 このため、同博物館は大学移転で廃棄される戦前の什器の救済とその再利用に取り組むことを目的に「什器レスキューチーム」(三島代表)を立ち上げ、九大箱崎キャンパスの工学部と理学部、馬出キャンパスなどの旧校舎で使用されていた木製家具計約350点を回収した。
 家具の再生には福岡県大川市の家具メーカー、ヨコタウッドワークが中心となって立ち上げた「大川リペア協議会」が協力。2015年の「IFFT/インテリア・ライフスタイル・リビング」で再生された家具が展示された。
 これらの木製家具類は「歴史的木製什器(家具)コレクション」として同博物館が入る旧工学部本館などに保管している。今回の寄付が集まれば、同博物館が回収する什器コレクションの最終的な総数は千点近くになる見通し。
 救済活動の過程で、歴史的な家具の保存などに関連するさまざまな問題が浮上したため、16年から課題解決に向けた実践研究も始まった。
 研究には「戦後日本の木製家具」著者で芝浦工大教授の新井竜治氏をはじめ、同大教授の真保晶子氏も共同研究者として参画している。トヨタ財団の研究助成金を受けて、約千点以上の九大の歴史的木製家具の保存・活用方法を模索する研究がスタートし、そのキックオフシンポジウムが5月19日に同博物館で開催された。
 新井氏は「戦前・戦後期の古い建物とその中の古い家具の再利用というビジネスモデルは、今後の日本の家具産業界に対してもビジネスモデルになる可能性がある」と話している。
 寄付は次のURLまで。九州大学×Ready
for「歴史的な木製学校家具を救え!九大什器保全活用プロジェクト」。https://readyfor.jp/projects/kyudai-furniture

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