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★カリモク家具副社長 加藤洋氏に聞く㊦ 新拠点「Karimoku Commons Tokyo」 新拠点と国産材の未来 国産材の多様性どう生かす 林業再生へ里山の木材に付加価値を

加藤洋氏
「カリモク コモンズ トーキョー」3階に展示されているカリモクニュースタンダード

 東京・西麻布にオープンしたカリモク家具の新拠点「Karimoku Commons Tokyo(カリモク コモンズ トーキョー)」。立ち上げの総指揮を執った加藤洋副社長のインタビューを前号に続いてお届けする。KNS(カリモクニュースタンダード)から国産材利用に取り組んでいる加藤氏が、国産材利用の現状と輸出展開についてどう考えるか聞いた。

 ―「正しい家具のありようを考える」ということが、これからのカリモク家具にとっての大きなテーマになっていると思います。「KNS」もこのテーマから始まったということですが、そこで国産広葉樹を使おうと思ったのはなぜですか。
 海外にはウォルナットやオークといった素晴らしい木材があります。いい家具を作るために、いい素材を使うのは業界の常識ではありますが、身近に使える木がたくさんあるのに、ウォルナットがはやっている、オークの天板が売れるという理由だけで素材を選ぶ家具作りが本当に正しいのでしょうか。
 人の影響を受けた生態系が存在している里山は、木をある程度使うことによってバランスが保たれるのですが、現状はまきや木炭の利用がほとんどなくなってしまって山が荒れ放題になった結果、人と動物とが接触する場面が増えたり、水が土に浸透されずに雨がじかに川に流れ込んで水害を起こしたり、さまざまな支障を来す原因になっています。
 持続可能な正しい木材利用のために「KNS」を立ち上げようとしていた当時は「ビジネスにするのは難しい」、小径木を張り合わせた家具のデザインについても「価値がない」という考え方がほとんどでした。
 林業は今、非常に厳しい状況に置かれていますが、デザインやものづくりを工夫して付加価値を付けることによって、里山の木材の価値を生み出すことができれば、山で働く人々の状況も改善され、川上まで含めた、本当の意味でのサイクルを再現することができると思います。

「MAS」で山元への
還元と針葉樹利用を


 ―「MAS(マス)」で初めて針葉樹を使われました。針葉樹は軟らかいので、慎重に検討されたのではないかと思います。
 まずは広葉樹からということで「KNS」を続けてきました。生き物の多様性、水源の涵養(かんよう)や木材生産といった森林の多面的機能を最大限発揮するためには、人工林だけではなく天然生林を維持していくことが必要です。無理やり針葉樹を植えて線香林のようになっているところは、針葉樹を伐って使って、本来の生態系に戻していく。それが世界的な流れになっています。
 その流れを実現するために家具メーカーとしてできることは何かと考えたとき、家具は身近にあって使うものなので、その材料の由来について思いを巡らしてもらえれば、少しずつ意識や行動が変わるのではないかと思います。
 「KNS」や「石巻工房 by Karimoku」で広葉樹を使うめどが立ってきたので、スギやヒノキなどの針葉樹をこれからどう生かしていこうかと考えたときに、国産材の自給率は40%近くまできていますが、その内容を見るとバイオマス利用が多くを占めており、山元が本当に助かっているのだろうかと思いました。
 ―加藤副社長は日本中の山の現場を回られていますね。
 そうですね。二束三文で買いたたかれるのではなくて、事業として成立する形での林業を考えたときに、家具が果たせる役割があるのではないかと思います。建築関係と比べると木材の使用量は少ないのですが、家具はブランドによる差別化を図ることができます。
 こうした理由で針葉樹を使うのですが、私は木の個性をそのまま生かすことを大切に考えています。ヒノキの白木の個性を損なうことなく、さまざまな課題をクリアするために試行錯誤して2年ほどかかったのですが、「MAS」で一つのいい形ができたと思います。

一定量を必ず使う 川上・川中に安心感を

 ―国産材利用については、供給に不安があるという声も聞かれますがいかがでしょうか。
 山には使うべき多くの木がありますが、広葉樹を製材できるところが減ってきていることがネックだと思っています。製材所の方々とお話しすると、そもそも売れるものだと思われておらず、たまに注文があるのでストックしているというのが現状のため、事業として成立する状況ではないと分かりました。いつ入るか分からない注文に対応するわけですから、やはり外材に比べても割高感や品質のばらつきが出ます。使い手からすると、これでいい家具を作れと言われても無理だろうという話になります。
 ―鶏が先か卵が先かという話になりますね。
 その通りです。ですから「私たちがリスクを負います。一定量を必ず使うので安心して集材して、事業として安定的に回してください」と言わないと、お互い疑心暗鬼になってしまいます。私たちのコレクションは、昔かたぎの方からすると「こんな木を使えるか」というものまで使っていますが、健全な森林の姿を取り戻すために、使える木を使うべきなのです。早くその流れをつくらないと、青息吐息で大変な林業や製材業がこの先、本当になくなってしまうかもしれません。

サステナビリティー
世界にどう訴えるか


 ―「KNS」はミラノサローネにも出展されていますが、日本の木を使った家具に対する海外の反応はいかがでしょうか。
 「KNS」の4割は輸出しており、米国や豪州、欧州、そしてアジアなど世界各地のお店で取り扱われています。海外では「ローカルの木を使うのはとてもいいことだ」と言われます。欧州ではサステナビリティーに関してセンシティブな方たちが多くなっています。
 ただ、それだけで購入まで結び付くわけではありません。クオリティーやデザイン、デリバリー、メンテナンスというところも含めて、ビジネスとしての仕組みが必要になってきます。
 ―家具新聞2月17日号と3月3日号で神戸大学大学院の黒田慶子教授に「都市近郊の木材利用」について伺いました。カリモク家具では、同大学構内のエノキを使った家具を試作されたり、神戸のケヤキの街路樹利用についても取り組まれたりしていますね。
 私たちで神戸大学キャンパスのエノキを使ったダイニングテーブルとスツールを作って黒田教授の研究室に納めました。街路樹のケヤキは今、乾燥している最中です。成長が早かったこともあり年輪は荒いのですが、それを一つの個性と捉えることもできます。多くの人が行き交う街の「思い出深い木だから大切に使おう」というような街路樹のストーリーと合わせて、デザインやものづくりの工夫を凝らした美しく、しかも長く使える家具を作りたいと思っています。
 一方で、街路樹として使われているケヤキやニセアカシアを捨てるのはもったいないと思い、自治体にとっても収入源になると提案したこともあったのですが、なかなか実現するのは難しいです。
 ―黒田教授からは日本の木の種類の多様性についても話がありました。
 日本の国土は南北に長く、高低差も激しいので木のバリエーションが多様ですね。しかし、商業的な価値があるとされているのは、広葉樹ではナラとタモが主で、カバについてもフローリングで多少の動きがあるくらいです。ナラばかり伐って使うのは、生態系のバランスを考えてもいいことではありません。ほかにもタブやシイ、カシ、北海道にはシラカバなどいろいろな木があります。価値がないということではなくて、木材の種類のバランスを考えながら皆さんに喜んでもらえるような家具ができないかということを考えていくべきだと思います。「カリモク コモンズ トーキョー」はこうしたことを考える場でもあるわけです。

国産ヒノキで作られた「MAS」。デザインは熊野亘氏
カリモクニュースタンダードの新作「Polar Lounge Chair(ポーラーラウンジチェア)」。デザインはモーリッツ・シュラッター氏(写真提供:カリモク家具)

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