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イームズの思考 超越した「普通」④ ルネサンス人間 思想・哲学ダビンチと共通点 芸術家と科学者の顔 武蔵野美術大学名誉教授・デザイナー・イームズ研究者 寺原芳彦

湖畔のピクニック風景から宇宙の果てへ、壮大な旅に誘う「Powers of Ten」(1977年)。地球に帰還して最後はDNAの中にある炭素原子の陽子にたどり着いて終わる
古代ローマ時代の建築家ウィトルウィウス「建築について」の記述をもとにダビンチが描いたドローイング「ウィトルウィウス的人体図」。芸術と科学の融和を象徴する作品として知られている

 イームズはルネサンス人間ともいわれている。それならば、いっそのことレオナルド・ダビンチとイームズを比較してもイメージが重なるところがあり、面白いと思う。
 そもそもルネサンスとは、端的に言うならば中世の芸術上および思想上において個性重視の解放を唱えた、イタリアで始まった文芸復興であり、革新運動であり、そのような時代における奇跡的存在がダビンチである。一方、時代と背景は大きく異なるが、イームズも米国の1920年代の狂乱、30年代の大恐慌、40年代の世界大戦に遭遇し、特に世界大戦とその前後の変革期に活躍。そのような2人をまともに比較するのは無理かもしれないが、それは承知の上である。
 片や国や支配者(パトロン)の下で、片や米国という自由な環境下であるが、思想・哲学において共通点があり、両者の源は「宇宙、地球、人間、自然、科学の成り立ちと仕組み」にあると思える。つまり芸術も科学上の「つながり」で構成されているという思想が窺(うかが)われる。2人とも芸術家であり、科学者であると言ってよいのではないか。
 ダビンチの時代に、地動説がどれほど流布されていたかは疑わしいが、ダビンチは天体研究もしており、その定かを知っていたら発見に基づく創造図があったかもしれない。そしてイームズに至っては、IBMとの取り組みによるコンピューター時代の先駆けで、存命ならばイームズ人生の第4幕としてマクロとミクロの世界を描いた「Powers of Ten」の続編が見られたかもしれない。
 また、具体的な発見に伴う「プロダクト」においてもダビンチは、ミラノ公に仕え、軍事顧問として戦車、投石器、大砲、飛行機、橋、船、建築なども考案している。恐るべき創造力。また、世界の至宝たるモナリザ、彫刻は周知の通りである。
 一方、イームズも同じく発明家であり、その因子を多分野に発展させている。成型合板のレッグスプリントとシェル、そしてプラスチック製一体型シェル、いずれも試行錯誤の末の製品といえる。それらは、デザインというテクニックによって20世紀最高の名チェアに仕立てられている。また、絵画、建築、一般造形にもずばぬけた才能を発揮しているのは言うまでもない。
 ダビンチ、イームズともに自然界に潜む「構造の掴(つか)み」を有する土壌を持ち、一般的には数学者とは呼ばないが、共に「数」と「構造」に「つながり」を持たせている。中世の数学者レオナルド・フィボナッチのことを熟知していたか定かではないが、イームズは映画「マセマティカ」で取り扱っている。その辺りからも、2人の共通因子として浮かび上がるものが窺われる。

 レオナルド・フィボナッチ イタリアの数学者。 アラビア数字がローマ数字よりも単純でより効率的なことに気付いて、13世紀初頭に「算盤(そろばん)の書」の出版を通じてその体系をヨーロッパに広めた。「ウサギの出生率に関する数学的解法」の解答で使用された数列が後に「フィボナッチ数列」として知られるようになった。この数列は、2つの連続する項の比を取ると、次第に黄金比(約1:1・618または約0・618:1)に近づいてくる。

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